The President

経営者インタビュー

株式会社chaintope 代表取締役CEO

正田 英樹

「インターネットの次はブロックチェーンだ」
そう力強く語るのは福岡県飯塚市に本社を構える株式会社chaintope代表取締役の正田英樹氏。インターネットが日本に上陸した約20年前に起業し、インターネット革命を目の当たりにしてきた1人でもある。次のインターネットを創ろうと思いを寄せる彼の意志と世界観に迫りたい。

Q.福岡、または飯塚でやる意味や意義などはありますか?

A.だんだん飯塚の街から活気がなくなっていくのを肌で感じているので、飯塚市を盛り上げたい

福岡市の方は、飯塚市というと大変な田舎にあるというイメージが強いようですが、僕は飯塚市を盛り上げたいと思っています。九州工業大学の情報工学部に入学して福岡に来て以来、そのまま福岡に残っていますが、だんだん飯塚の街から活気がなくなっていくのを肌で感じ、この飯塚という場所で会社を立ち上げ挑戦し続けています。「せめて福岡の中心部でやろうよ」とか「もう東京に来た方がいいよ」と何回も言われました。しかし、最近はこの飯塚でブロックチェーンという最新技術を使った事業をやっていることを珍しがっていただいて、ブロックチェーン界隈の有名な方々もわざわざ飯塚まで足を運んでくださいます。最初から東京などの明るいところに集まるのか、暗いところで一生懸命火を灯すのかという考え方の問題だと思っています。東京には「Neutrioーニュートリノー」と「HashHubーハッシュハブー」という、ブロックチェーンに特化したコワーキングスペースが2つあります。そこではブロックチェーン関連の勉強をしたり、一緒に集まって仕事をしたりしています。現在、福岡市内にもブロックチェーンに特化したコワーキングスペースを作りたいと思っており、まもなく発表します。

Q.若くして飯塚で起業したということですが、立ち上げ当初など苦悩などはありましたか?

A.勢いで会社を創業、当初はしばらく食べていけなかった

私が会社を創業したのは24歳の頃でした。私は九州工業大学の情報学部に通っていて、大学生協の学生委員会に所属していました。当時、情報工学部は新しくできた学部で、新設されてから数年間は活気がありましたが、数年経つとだんだん元気がなくなってきました。あまりに盛り下がって新入生の歓迎さえままならない状態でした。「誰もやる人たちがいないから仕方ないけど俺たちがやるか」と思い、複数の学生団体で協力して新入生歓迎組織を立ち上げました。また、情報学部というのが日本では珍しく人気があったにもかかわらず、地域の方々と接点がなく、寂しい雰囲気でした。そこで、地域を盛り上げるためにお祭りなどにお店を出したりして地域のイベントに積極的に参加するようにしました。最初は出店のアルバイトから始めましたが、やっていくうちに地域の方々が場所や道具を貸してくださるようになってお店を自己運営するようになりました。すると商店街の方から「君たちはみんなで一緒に集まってソフト開発せんとね?」と言われて、サークルのような20人のチームを作りました。約350万円で道路交通情報システム案件を受けたのが最初の仕事で、その勢いで会社を作りました。大学を卒業した後はその会社の取締役になりましたが、しばらくは食べていけませんでした。

今、ほとんどの方々がブロックチェーンに馴染みがないのと同じように、約20年前の当時はインターネット黎明期で「インターネットって何?」という雰囲気でした。飯塚では十分な仕事がなく、福岡の中心地である天神に事務所を移しました。昔はメディアの中心が新聞だったので、情報の伝達がとても遅く、シリコンバレーの情報が2年遅れで東京に、東京の情報が2年遅れで福岡に伝わるという状況でした。しかし、今はインターネットがメディアの中心なので、情報は場所によらずにほとんど同時にやってくるので、飯塚でも全然勝負することができます。

Q.海外進出についてどうお考えですか?

A.海外の中で一番最初にブロックチェーン事業をやることができる東南アジアでやって、そこで得た技術や知見などを日本に還元するという作戦

ブロックチェーンは最新技術のため、日本だけではやっていけません。日本で最初に取り組もうと思っても、新しすぎて取り組むことができません。日本の行政や大手企業は特に前例主義で、前例の無いものには取り組もうとしません。また、ブロックチェーンは非中央集権型なので、日本の今の中央集権的な企業や団体は前向きに取り組もうとしてくれません。例えば、電力会社がそうです。今、発電された電気のほとんどはまず電力会社に集められ、それから各家庭や地域に分配されます。しかし、これからは、個と個をつなぐP2P(ピア・トゥー・ピア)というのが出てきます。このシステムを導入すると今の中央集権的な電力会社のシステムは崩壊してしまうからです。

しかし、日本でブロックチェーン事業が本格的に始まるのを待っていたら、海外の他の企業に先を越されてしまいます。そこで私たちは、海外で先に実現したものを日本に戻してくる方法が一番早いと考え、今いろんなパターンで実験を行なっています。海外の中で一番最初にブロックチェーン事業をやることができるマレーシアやインドネシアなど東南アジアでやって、そこで得た技術や知見などを日本に還元するという作戦をとっています。東南アジアでの事業が着地すれば、さらにその他の国々にも海外展開を進めていこうと思っています。

Q.どういう人材がマッチしますか?

A.ブロックチェーンの天才か、もしくは「ブロックチェーン面白いっ!」と心から思える人

正直、新卒の学生はこの会社で働くことは難しいかなと思います。ただ、素晴らしい技術がある若き天才をこの目で何人も見てきたので、年齢は関係ないと思っています。ブロックチェーンの天才か、もしくは「ブロックチェーン面白いっ!」と心から思える人が欲しいと思っています。細かい知識は別として、感覚的に「これからの時代はブロックチェーンだ!」と思って、開発に熱中できる人じゃないと正直やっていくのは難しいと思います。また、海外にも優秀な人材がもちろんいますが日本にもブロックチェーン界隈で世界で通用する技術を持った人はたくさんいます。

Q.正田さんご自身の信念を教えてください。

A.「至誠報恩」という言葉を大事にしている

「至誠にして動かざるものは、未だこれあらざるなり」「お世話になった方への恩を忘れ出すと物事はうまくいかない」

個人的には、「至誠報恩」という言葉を大事にしています。この「至誠」という言葉は幕末の時代に地元山口の偉人・吉田松陰先生がおっしゃった「至誠にして動かざるものは、未だこれあらざるなり」(「誠を尽くして、物事が動かないことはない」という意味)という名言から来ています。信念を持って行動すれば、物事は良い方向に変わるということです。
「報恩」に関してはまず、物事を達成するためには周りの多くの方々からの応援を頂かないと成し遂げる事は難しいのです。お世話になった方への恩を忘れ出すと物事はうまくいかないんですよ。「至誠」というのは、どんどん行動していくわけですからいろんな人にお世話になったりご迷惑をおかけしたりします。そこに恩返しをしたいという気持ちを持つことが、物事の達成に繋がるんじゃないかなと思っています。お世話になった方への感謝の気持ちを大切にする事が、前に進むエネルギーとのバランスを取ってくれて、新たなる応援を頂く事ができます。

会社としては、楽しくないとやっていけないので、社員に対して細かいことは言いません。一体化するというか、仕事というより趣味というか生活の一部として楽しくやっています。その源泉としては、個人的には「世の中にもっと面白いものを生み出したい」ということもありますし、純粋に技術が楽しいです。ブロックチェーンの世界は数学の世界だから、普通に生活している方から見ると、何を言ってるのか理解することはできないと思います。そういう世界を楽しいと思う人たちがブロックチェーン界隈、chaintopeにはいます。何も言わなくても自分から進んでブロックチェーンに対して真摯に取り組んでいます。そういう状況にめぐり合うのはとても幸せだと思いますし、こちらからモチベーションをあげる必要もありません。

学生や社会人に一言お願いします!

表現が悪いかもしれませんが、少し狂ってるくらいの人がちょうどいいと思っています。「ブロックチェーンって何ですか?」というマインドの人ではなく、「ブロックチェーン面白いですよね!」というマインドの人が会社としても欲しいと思っています。実は、「狂う」というのはいい言葉で、吉田松陰先生も若者に向けて「君たち狂いたまえ」と言ったそうです。「狂ってる」と思われるくらいの圧倒的集中力がないと開発をやっていくのは難しいと思います。生活を安定させるために大企業に就職して仕事をやりたいという、企業に依存している人と、メガベンチャーを創出するためにこの会社に入りますという人ではマインドセットが本当に真逆です。ベンチャーに入りたいというのはまだしも、メガベンチャーを創出したいという人は狂ってるくらいじゃないと正直ダメだと思っています。

しょうだ ひでき

株式会社chaintope代表取締役CEO。山口県光市出身。九州工業大学情報工学部卒業。九州工業大学客員教授。1999年7月、株式会社ハウインターナショナル創業。2015年頃より共同創業者の故・高橋氏、現CTOの安土氏らと共にブロックチェーンの研究開発をスタートし、早期から社会実装に向けた取り組みを始める。2016年12月、ブロックチェーンに特化して事業を進めるべく株式会社chaintopeを設立。ブロックチェーンを用いた自律分散型の新たな社会モデルの構築をモットーに様々な分野でのブロックチェーン実装に向けて日々奔走。

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