The President

経営者インタビュー

株式会社力の源ホールディングス
代表取締役会長兼社長

河原 成美

1日7万食、年間約2千5百万食のラーメンを世界中のお客様に提供している「一風堂」。その「一風堂」を経営するのが、株式会社力の源(ちからのもと)ホールディングスだ。若い人や女性が入りやすいかっこいいラーメン店を目指しながら、RAMENを世界食にするべく様々な取り組みを行っている河原会長と採用責任者でもある関口さんにお話を伺った。

お二人のこれまでのキャリアを教えてください

河原:小さい頃から母の手伝いをするのが好きで、学生時代には飲食業のアルバイトばかりしていました。そこから飲食業に興味を持って、レストランバー「AFTER THE RAIN」を始めました。レストランバーには若者やおしゃれな女性のお客さんが毎晩のように集まっていましたが、もう一つ別のお店をやりたいと考えていました。当時のラーメン店は小汚く、あまりかっこいいイメージもなくて、若者や女性客から敬遠されていたんです。そこで、僕は女性が1人でも入れるような、おしゃれでかっこいいラーメン店を作ろうと思い、1985年に「一風堂」をスタートしました。その翌年には、「力の源グループカンパニー(当時)」を設立し、現在は、創業の地である福岡から世界へとラーメンを通じて、日本の食文化を発信しています。

関口:小さい頃から食べ歩きをするほどラーメンが好きでした。いつも「一風堂」に行く度に、若いスタッフがとても楽しそうに働いているのが印象的で、「将来、ラーメン屋でアルバイトするなら一風堂で働きたいなぁ」と思っていました。そして大学生になり、「一風堂 池袋店」や、「一風堂 丸の内店」でアルバイトをしていました。大学卒業後は大手企業で一生懸命働きましたが、30歳になってこれまでを振り返ったときに、後悔してもいいから新しいことにチャレンジしたいなと感じました。そこで、大好きなブランドを世界に届けいたいという想いから、小さい頃からお世話になっている力の源グループに入社することを決めました。

Q.福岡でやる意味や意義はありますか?

A.福岡といったらとんこつラーメンというブランドと、アジアへの近さ

河原:とんこつラーメンといったら福岡、福岡といったらとんこつラーメンというブランドと、アジアへの近さですかね。例えば、福岡から東京よりも上海の方が時間的にも距離的にも近いんですよ。僕たちは「博多 一風堂」1号店を福岡にオープンし、9年後に関東に進出し、ラーメン業界変える一心で取り組んできました。1998年には、合弁会社として一風堂ブランドではありませんが、初めて上海にお店を出しました。次は必ず直営店で一風堂を海外に出したいと思っていて、同時多発テロなどがあり時間を要してしまいましたが、2008年に一風堂の海外1号店をニューヨークにオープンすることができました。私たちが積極的に海外に出て行き、ラーメンや、日本の食文化を伝えていく役割を担い、業界を盛り上げていけたらと思っています。

Q.海外進出についてお伺いしてもいいですか?

A.海外の店舗の方が増えるのではないかなと予想している

河原:現状としては、今海外には一風堂ブランドを中心に、約100店舗あり、国内外合わせて13ヶ国・地域に約250店舗あります(2018年12月末現在)。日本のラーメン業界は成熟しているので、これからはおそらく海外の店舗の方が増えるのではないかなと予想しています。海外は需要もチャンスも市場もあるので、どんどん進出していきたいですね。ただ、それぞれのカントリーリスクはあって、海外に進出するときは上手くいかないことばかりでドキドキです。80〜90年代に東京や北海道など他の地域にとんこつラーメンを持っていくのは大きなリスクがありましたが、今は当たり前のことになっています。これと同じように、今海外にラーメンを出すことはリスクがあるかもしれませんが、将来的には当たり前のことになっているんじゃないかなと考えています。海外では、日本の常識は非常識であったり、日々、予期せぬことが連続して起こりますし、いつどこで失敗するかわかりません。いろんな困難を乗り越えながら、RAMENをSUSHIと同じような世界食にしたいですね

Q.力の源ホールディングスでは、どんな人材を求めていますか?

A.コミュニケーション能力や柔軟性がある人材

私たちは飲食業やサービス業以前にコミュニケーション業であると考えている

関口:コミュニケーション能力や柔軟性がある人材を求めています。私たちは飲食業やサービス業以前にコミュニケーション業であると考えています。ラーメンというコミュニケーションツールを使って世界中に”笑顔”と”ありがとう”を伝えていく会社なので、コミュニケーション能力を重要視しています。国内のラーメン屋さんと違って、海外はレストラン形式で接客をしたり、受付の方がいたりするのでコミュニティができやすい。なので、ラーメンというツールをコミュニケーションとともに世界に届けることができる能力は必要です。だからこそ、飲食業とサービス業はコミュニケーションに自信のある方に来て欲しいなと思っています。

また、私たちには「変わらないために、変わり続ける」という企業理念があります。変えるものと変えないものを常に取捨選択していく中で、変えないという守りにばかり入ってしまうと個人も組織も衰退します。ここは変えた方がいいのか、それともあえて変えない方がいいのか、常にアップデートできる柔軟性があったらいいなと思います。私たち自身、力の源らしさや、一風堂らしさとは何かをよく議論することがありますが、”力の源(一風堂)らしさとは何か”を疑うことのできる、新しい価値を想像していくための柔軟性が必要だと思っています。

Q.お二人のご自身の信念はありますか?

A.河原:自由にやろう。ただ、フリーダムではなくリバティー
関口:「幸運は準備とチャンスの交差点」

河原:信念はあんまりないかもしれない(笑)。自由にやろう、というのが私の信念かもしれません。ただ、自由といってもフリーダムではなくリバティー。制約はあるけど自由にいくというスタイルです。ただ、信念がないからといってぶれるわけでもありません。情報やハウツーではなく、自信を持てるような準備をしておくことが必要だと考えています。

関口:「幸運は準備とチャンスの交差点」が私の信念です。せっかく訪れたチャンスを逃したくはないので、常にアンテナを張って準備するようにしています。入社直後、ヨーロッパに河原と出張で行かせてもらったのですが、河原がパリのセーヌ川をじっと眺めていたのを覚えています。「何か感じているんですか?」と聞いたら、「特に感じていない、刷り込んでいるんだよ。」と言っていたのがとても印象的でした。景色、匂い、建物のデザインなど、その時は何も感じなくてもいいけど、今刷り込んでいることがいつか自分のイメージとなってよみがえってきて役に立つかもしれない。それによって、意識的にものを見ることができるようになり、多くのことに興味が増して自分の引き出しが増えてきたように思います。

就活生・転職活動中の方に一言お願いします!

河原:就活や転職など色々悩むこともあるかもしれませんが、まずはやってみないとわかりません。情報にとらわれずに、信頼できる友達に意見を求めたり、自分と向き合うべきです。一人ひとりは個性的なはずなのに、選択の方法が個性的じゃなさすぎる人達が多いように感じます。選択肢は情報ではなくて、内面の自分とどれだけ向き合うかです。みんなもっと自分と向き合う時間をとってもいいんじゃないかな。自分の好きなことも嫌いなことももっと掘り下げてみたらいいと思います。

関口:個人的には、福岡の良さを知るには、外に出てみて初めて分かること、肌で感じることができるとも思っています。福岡が魅力的だからこそ、もっと外の世界を見てほしいという思いがあります。そして、福岡を軸にしながらもいろんなところに行ってチャレンジしてほしいと思います。

かわはら しげみ(写真左)

株式会社力の源ホールディングス代表取締役会長兼社長。1952年福岡県生まれ。1979年に自身初の店レストランバー「AFTER THE RAIN」を立ち上げる。1985年「博多一風堂」一号店を開店するとともに、翌年に力の源カンパニー(当時)を設立。2008年のニューヨーク進出を皮切りに欧米・アジアでの出店を加速。その他、数多くの飲食事業のプロデュース、コンサルティングを手掛ける。2017年3月東証マザーズに上場し、2018年3月東証一部に市場変更。

せきぐち てるき(写真右)

株式会社力の源ホールディングス人事総務本部採用教育グループリーダー。学生時代に一風堂でアルバイトを経験。大学卒業後、新卒で株式会社ユニクロ入社。その後、株式会社リクルートライフスタイルを経て、2016年に力の源ホールディングス入社。現在は採用、教育の責任者を務める。小学生の時からラーメンの食べ歩きをスタートさせた、生粋のラーメン好き。

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