The President

経営者インタビュー

株式会社ヌーラボ 代表取締役

橋本 正徳

福岡の中心部である大名に本社を構える、福岡を代表するスタートアップがある。「チームで働く全ての人に」をコンセプトに、プロジェクト管理ツール「Backlog」や作図共有ツール「Cacoo」、ビジネスチャットツール「Typetalk」の開発を行なっている。本社がある福岡をはじめ、東京や京都、さらにはニューヨークやシンガポール、アムステルダムにも拠点を構える株式会社ヌーラボに迫る。

Q.橋本さん自身のキャリアを教えてください

A.劇団、家業、八百屋やデザイン、そしてエンジニア

小さい頃はプログラムを組んだり、音楽を作ったりして遊んでいましたね。表現することが好きで、地元の高校を卒業した後は上京して演劇系の専門学校に通いながら劇団を立ち上げたりしました。20歳で結婚した後は、福岡に戻って実家の家業を継いだのですが、上手くいかずに辞めちゃいました。その後、八百屋やデザインの仕事をしても上手くいかず途方にくれていたとき、エンジニアの仕事を見つけたんです。そして、派遣エンジニアとして3年間働き、意気投合した仕事仲間と会社を立ち上げました。それが今のヌーラボ。今考えると、山あり谷ありな道のりでしたね(笑)

Q.福岡で会社をやっている意味やきっかけ、メリットに感じていることはありますか?

A.地元福岡の応援がアツいというのがメリット

起業しようかなと思ったきっかけは、自分の所得をあげたいと思ったのが一番なんですよ。その時に家庭の事情もあり福岡から引っ越すことができなかったので、そのまま福岡にいます。今年でこの会社も16期目なんですが、福岡でやるメリットとしては、地元の応援が大きいところです。応援にもいろいろあって、単純に「頑張って」と応援してくれる方もいれば、自社のサービスのユーザーになってくれる企業や取り上げられた記事をシェアしてくれる方もいます。地元福岡の応援がアツいというのがメリットかなと思っています。
また、僕らが福岡でやることで「ヌーラボができたなら、僕らもできる」と感じて、アツい志を持ったフォロワーが増えたり、僕らが得た知見を共有できたりするので、そこが意義だと感じています。

Q.海外進出の最初のきっかけを教えてください

A.「Cacoo」のリリースが最初のきっかけ

自社が提供しているブラウザ上で図を描くツール

自社が提供している「Cacoo」というブラウザ上で図を描くツールをリリースしようとしたのが最初のきっかけです。それまでは僕自身プライベートも含めて海外に行ったことなかったんですけどね。「Cacoo」を作る段階から「海外に向けて出そう!」と考えていました。僕らがやっているクラウドサービスというのは薄利多売なんです。そのため、多く売っていかないと成り立たないので、国内市場だけをターゲットにしていても、単価を高めていくしかありません。だから、海外にユーザーを作って、ユーザーの数を増やしていこうという戦略的な考えもありました。でも、海外でサービスを売ってみたいというロマンの方が大きかったと思います。「Cacoo」を海外展開するために、ニューヨークのカンファレンスにブースを出展したのが、海外での初めての活動です。サービス名は自分たちだけで決めずに、福岡にいる外国人に「この名前どうですかね?」とアンケートをとったり、外資系の会社で働いている知り合いにサービス名の案を聞いたりしました。

現在はニューヨーク、シンガポール、アムステルダムにそれぞれ子会社があり、開発とマーケティング両方をやっています。台湾やアリゾナ、サンフランシスコ、ドバイにはリモートで働いている社員もいます。おかげさまで「Cacoo」は300万人を超えるユーザーに使っていただいているんですが、そのうち80%くらいは海外のお客さんが多いです。自社サービスの「Backlog」もまだ国内中心ではありますが、少しずつ海外でもユーザーが増えてきています。

Q.ヌーラボ社内にも海外の方は多いんですか?

A.第一言語が日本語の人が75%、それ以外の人が25%

25%=フランス語やドイツ語、台湾語など基本的に英語圏ではない人

ヌーラボの社員に関しては、第一言語が日本語の人が75%、それ以外の人が25%というところです。その25%はフランス語やドイツ語、台湾語など基本的に英語圏ではない人たちが多いかな。コミュニケーションの共通言語としては英語を使っています。また、海外のユーザーも多いので、必然的に英語を使う必要がありますね。
今後の展望としては、コラボレーションワークがしやすい環境を提供することが必要だなと思っています。国や宗教、言葉、性別を超えた異質な人たちが一緒に働けるような環境を作っていけたらいいなと思っています。

Q.どんな人材を求めていますか?また、どんな人材が会社にマッチしていると思いますか?

A.”エンジニアリング”能力

やり方がわからないものをやり方がわかるようにしていく能力

現在、主にエンジニアを採用しているので、エンジニアであるというのがベースなんですが、エンジニアにも非エンジニアにも共通することが”エンジニアリング”ができて欲しいということです。特にIT企業では、流れ作業などの誰でもできる仕事は自動化されていきます。そのため、やり方がわからないものをやり方がわかるようにしていく”エンジニアリング”能力が求められるかなと思っています。これは僕たちだけではなく、他の会社も必要としていることだと思います。

Q.橋本さんの信念は何ですか?

A.”コラボレーションワーク”を最大化すること

異質な人同士が、同じ方向を向いて一緒に働くこと

コラボレーションワークを最大化することかな。コラボレーションワークとは異質な人同士が、同じ方向を向いて一緒に働くことです。Diversity(多様性)とInclusion(包括)という話があります。Diversityは単純に多様性があればいいんですが、Inclusionはその多様性をうまく包括して同じ方向を向いてアウトプットしていきましょうというものです。今、そのInclusionでつまづいてる会社や組織が多くて、個々の差や違いばかりに注目してしまって変に複雑化してしまっています。例えば、日本と海外の話になると、日本と海外の違いばかりがよく話題に上がります。しかし、本当は日本と海外で似ているところを探して注力すれば、日本でも海外でも成功できるはずなのに、差や違いにばかり注目しちゃうんですよね。なので、僕自身の軸としては、異質なもの同士が共通項を持って、同じ方向を向いて働くコラボレーションワークを最大化していきたいと思っています。

就活生・転職活動中の方に一言お願いします。

ヌーラボは、エンジニアとして人として、とても成長できる環境だと思います。エンジニアリングについてはうちの会社にいると自然に学べるかなと思います。最近はアプリコンテストやハッカソンなどに出向いて、学生と接点を持つようにしているのですが、スキルについては社会人と同等の学生もいるし、プログラミングのスキル自体については年齢は関係ありません。そのサービスが売れるかどうかに関しては社会人の方が知恵がありますが、スキルに関しては同等もしくはそれ以上の学生もいます。ぜひ、自分のスキルに自信のある学生やエンジニアの方は来て欲しいと思います。

はしもと まさのり

株式会社ヌーラボ代表取締役。1976年福岡市生まれ。1994年福岡市立早良高校卒業後に上京し、飲食業や劇団主催、クラブミュージックなどに携わる。1998年、福岡に戻り、父親の家業である建築業界で働き、2001年にプログラマーに転身。派遣プログラマーとして働いていたものの、「もっと自分たちのソフトウェアを使ってくれる人と対話をしながらものづくりをしたい」と考え、2004年に福岡にて仲間とともに株式会社ヌーラボを設立し、代表取締役に就任。現在は、プロジェクト管理ツール「Backlog」や作図共有ツール「Cacoo」、ビジネスチャットツール「Typetalk」を開発・提供している。

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